1時過ぎというお昼には少しだけ遅い昼食を女は人気の少ない食堂で摂っていた。


あれから、女にとって予想外の出来事に心労が溜まる日々が続いていた。仲の良かった友人達が何処から聞きつけたのか男と付き合っていたことをどうして教えてくれなかったのか、と質問に来るのだ。
教えるも何も、そもそも付き合っていると男が思っていたこと事態別れ話が出て初めてしったのにそれ以前に教えられるわけが無い。それを事情を知らない友人達に悟れというのは無理な話で、仕方なく曖昧にかわす。


卒業まであと4日。男が去っていないのに真実を話すわけにもいかない。自分で男の話にのったのだから、言葉には責任を持たないといけない。
意味のなさない質問攻めに合う日々に、先人の言葉を思い出す。


口は災いの元。


今回の一件はそれ以外の何でもない。
あの時、何時から付き合っていることになっていたのか、と聞けばこの様な面倒な状況にはならなかったのかも知れない。
だが、あの時はどうせ直ぐに去るのなら波風立てるよりは黙って頷くのが最善だと思ったのだ。そんな浅はかな考えを持ったことに、自分でも呆れる。別に男と揉めるならそれはそれでも良かったのかも知れない。


男が此処を去るまで短くてあと4日。長ければあと2週間程は居るかもしれない。
それまではのらりくらり、とはぐらかさなければならない。


「不味いな」


ずるりと、考え事をしているうちにのび掛けたラーメンを口に運ぶ。そうして昼下がりの午後は過ぎる。