夕方、雪菜は夕食作りに勤しんでいた。

もうあとこの家にいるのも残り3日だ。

みんなにできるだけの恩返しがしたい。そう思いながら、一生懸命作る。


「雪菜、話がある。」

台所にいつもより引き締まった表情の冬弥がやってくる。


「どうしたんですか?」

雪菜は微笑んで聞く。


「大事な話なんだ、2人で話したい。」


「いいですけど、今料理してるんで、夜でも大丈夫ですか?」


雪菜の言葉を聞き、台所にいた真希と桜に頭を下げる。


「姐さん、桜さん、雪菜と話がしたいので、連れて行ってもいいですか?」


冬弥が急にかしこまるので、雪菜は驚く。
以前、雪菜と話に来たことはあったが、こんな風に頭を下げてる所はみたことがない。


すべてを察した真希は


「冬弥くん、いいわよ。」

とにっこり微笑んだ。

桜も隣で微笑む。


了承を得ても、冬弥はそのままいつもより長く頭を下げた。


「雪菜行こうか。」


冬弥はそう言って雪菜の手を繋ぐ。


「えっあっはい。」


雪菜は突然手を繋がれて驚く。

辛い時や怖い時に手を握ってもらったことはあったが、こういう場面で冬弥はいつもドライだった。





覚悟を決めた男の顔ね。


真希は冬弥の後ろ姿にそっと呟いた。