組長の部屋を出てからも、しばらくただ呆然としていた。


俺がこの組をでる?

俺はそれくらいの存在だったのだろうか。


幼い頃からここにいて、極道のことを学んできた。たしかに1番興味があったのは医学だったが、極道のこともそれなりに鍛練を積んだつもりだ。


この組に命を尽くす。

自分なりにそれくらいの覚悟はあったし、それが当然だと思っていた。



雪菜のことを好きになっていることを自分なりには隠していたつもりだ。ただ雪菜が狙われて過呼吸を起こした時にみんなの前で彼女を抱きしめた。
あの時は体が勝手に動いたし、したことには後悔していない。
ただ、感ずいた人間もいたと思う。


俺の行動はたしかに、今まで俺が女性に見せたことがない姿ばかりだった。だけど、自分なりにみんなの前では雪菜に特別な接し方はしなかった。いつも通り、淡白な言い方をしていた。

家族のように一緒にいる人間に自分の気持ちがばれることが恥ずかしかった。