「失礼します。」

冬弥は組長の部屋に入る。


中には大介、真希、雅人、太一、真也がいた。

冬弥は部屋で頭を下げる。


「冬弥、頭を上げろ。」

大介に言われて、ピシッと上げる。


「最近の働き、ご苦労だった。感謝する。」


「ありがとうございます。」

冬弥ははっきり言う。


大介は一呼吸置いて言う。








「冬弥、お前はこの組を出ろ。」













冬弥はまさかの事に頭が真っ白になる。





「俺、なにか致しましたでしょうか。裏切るようなことは絶対にしておりません。働きが足りなかったのなら申し訳ございません。もっと精進致しますので。」


冬弥は頭を下げながら言う。


「冬弥、お前の働きはよかったよ。裏切ってないことも分かってる。」


「ではなぜででしょうか。」


冬弥は頭を下げたまま言う。



「冬弥、本当はやりたい仕事があるんじゃないのか?」


「えっ。」
大介の言葉に冬弥は驚いて頭をあげる。


「お前は組の仕事をちゃんとこなしていたよ。だけど、お前が本当に興味を持ってるのは医学なんじゃないか?」


冬弥は言葉を失う。医学に興味があったのは事実だ。だけど、それを口に出したことはないし、最近は医学書も読んでいない。


「冬弥は治療をしている時は、他のどの仕事をしている時よりもいきいきしている。今回の橋本組との抗争で怪我した人間も冬弥の治療はいいと褒めてたぞ。」




「それにお前、惚れてる子がいるだろ。」



冬弥は絶句する。



「やりたい仕事について、好きな子と幸せに暮らす。お前は足を洗って表の世界で生きろ。」