「もう痛くないです。」

雪菜がそう言うと、冬弥の表情が和らぐ。


「水……飲みたいです。」


手術の緊張や、痛みの影響もあって、雪菜は喉がカラカラだった。

冬弥は未開封のペットボトルを空けて、コップに水を入れる。


雪菜が起き上がろうとすると、また激痛くらいたいかとニヤッとした目をして言う。

冬弥は負担にならないよう雪菜を抱き起こし、傷口より上の肩甲骨辺りに腕を回して、もたれかからせる。

雪菜はもたれるなんて重くて悪いと思う。背中は痛くて力を入れられないので、手で自分をなんとか支えようとする。

「俺にもたれかかって。力抜いて、大丈夫だから。」

冬弥はそう言って、雪菜を自分の腕の中に倒して、力の入った手をそっとベッドから外す。


組の仕事は体力仕事も多く、冬弥はそれなりに鍛えている。細く見える体だが、しっかり筋肉はついていた。


「あっ、ありがとうございます。」

冬弥は片方の手でコップをとり、雪菜に渡す。

「ゆっくり飲めよ。まだ起きたばかりだ。」


雪菜は忠告どおり、ゆっくり飲む。
乾いた喉に水が流れていく。

「美味しかったです。」

雪菜がそう言ったので、冬弥は優しく雪菜を寝かせた。