雅人達と一緒に育ててていた。

冬弥はとにかく頭が良かった。言われたことはすぐに覚える。そのうえ、冷静。

この組で間違いなく、重役につくと思った。

冬弥はなんでもすぐにできるが、どんなことにも興味を示さなかった。


冬弥が唯一興味を示したのが、医学だった。怪我人が出て闇医者を呼ぶたびに冬弥はやってきて、その人の後ろをついて回る。

大介に言われて医術を習いだした時は、驚く程に集中して医学書を読みあさり、手技の鍛錬にいそしんでいた。

闇医者の所で修行して、今ではもう教えることはないと言われている。


ただ修行を終えてから、しばらく経つと急に医学書を読まなくなった。


最初は不思議に思うだけだったが、しばらくして気がついた。


冬弥はこれ以上医学を学んだところで、この世界にいる限り使うことはないと。

学んでも学んでも活かせることはない。それは非常に虚しいことだ。


冬弥は口数が少ないタイプで、あまり自分を表現する方ではない。
元々の性格もあるだろうが、あくまで拾われの子だという意識が彼をそうしているのかもしれない。


なので冬弥がこの仕事にどこまでやる気を持ってるかは分からない。ただ頭もいいし、仕事はきちんとする、それに彼はなんやかんや仲間想いなところもある。彼を組としても必要としていたし、彼もこの世界で生きることを当然のように思っているだろう。


なので、誰も何も言ってこなかった。

だけど、このままではダメなのかもしれない。


雪菜ちゃんがこの組に来てからそう思った。


冬弥は雪菜ちゃんの前では本当にいい顔をする。彼女のことは本当に助けたい、守りたい、笑顔にしたいそう思っているのが分かる。


そろそろ彼の本当の気持ちに目を向ける時なのかも。

このままやりたいことからも好きな人からも目を逸らし、生きていくことは冬弥にとっての幸せじゃない。


真希は3歳の時から冬弥を育ててきた。
本当の息子のように思っている。

寂しくなるわね……。

真希は1粒の涙を流した。