竜也が開いた襖の隙間から2人の様子を眺めていた。


「竜也おつかれ。夜遅くにどうした?」

「真也さん、お疲れ様です。いや、冬弥に少し用事あったんで、探してたら、雪菜ちゃんの部屋にいて…
声かけようと思ったんですけど、なんか盛り上がってそうだったんで……

冬弥があんな風に笑ってるところ初めて見ました。」


「冬弥は雪菜ちゃんといる時はいい顔するよな。」

真也も襖の隙間から2人を見る。


「そうですね。冬弥、雪菜ちゃんのこと気にってますよね。
俺、雪菜ちゃんの護衛、冬弥と2人でやるって聞いた時、冬弥は最低限しかやらないだろなって思ってたんです。冬弥、女性の護衛とか1番嫌がりそうなんで。俺は雪菜ちゃんならかわいいし、まあ一緒に楽しく護衛生活すればいいって思ってました。
だけど、冬弥は俺と2人きりにさせるのが嫌なのか、別仕事終わったらすぐ戻ってきて、代わると言いました。夜中の11時とかでもですよ。今までの冬弥ならありえません。」

竜也の発言を聞いて、真也が笑う。

「まじか!!それはもはや冬弥じゃねぇわ。夜中にわざわざ護衛代わりに来るなんてありえねぇ。」


「ですよね笑
……2人はうまくいきますかね。」

竜也はぽつりとつぶやく。


「ないだろうな…。残念ながら。」

真也は寂しそうに話す。

「雪菜ちゃんはかわいくて、真面目で優しくていい子だ。だからこそあの純粋な雪菜ちゃんにはこの世界は似合わない。彼女は表の世界で生きる人間だ。そのことは冬弥も分かってるだろう。
だから、自分の気持ちは打ち明けないだろうな…。
生きる世界が違う。これが辛いが現実だ。」


「やっぱりそうですよね。俺も雪菜ちゃんにはこの世界、合わないと思います。」

2人は薄暗い廊下から明かりのともった部屋で笑い合う姿を切なく見つめた。