夕暮れの空の元、倉庫までの廊下を歩く。


するとパンッと銃声がなる。



「雪菜っーーーー」

冬弥が雪菜を押し倒して、姿勢を下げて、抱え込む。

「大丈夫か!!!」

「…はい。大丈夫です…」

何が起こったの??


冬弥は雪菜をさっと自分の後ろに隠す。

「俺の後ろにいろ。動くなよ。」

そう言う冬弥の右手には銃が握られていた。

屋敷の木の上から男2人組が狙ったのが分かった。


「うわーー!ーーーーーー!!」

木から飛び降りて、男は銃を打ちながら突っ込んでくる。


パンパンパンと銃声が響く。

冬弥は木の柱に身を細めながら、銃を打つ。

他の組員達もやってきて、男2人を取り押さえた。

1人の男が叫ぶ。
「高杉雪菜ーーーお前は橋本組の商品だろうがーー背中にもその印ついてるだろーが。
なぜ逃げた。てめぇが逃げなきゃ、俺らは今頃こんな思いはせず、金持ちだったんだよ。おまえは俺らの人生を狂わせた。クソ女が!!」

「くそがー。俺はおまえを許さない。」
もう1人も叫んだ。

「静かにしろ!!」
組員が蹴りを入れたことで意識を飛ばし、声が聞こえなくなる。

雪菜は彼らの言葉が耳から離れない……
本気で怒っているのがわかった。
2人は自分を家から引き出して、部屋に監禁してきた男だった。なんどもやられた……

忘れかけていた彼らとの気持ち悪い思い出が蘇る…


怖い、怖いよ……



「雪菜!!」

冬弥は雪菜の両肩を掴んで、目を見つめる。
恐怖に怯え、目の焦点が合わない。
顔の色が青ざめていく……


「雪菜、しっかりしろ!大丈夫だ!!」

冬弥の声が響く。



「ハーーーハーーハーハーハッハッハハハハハハ」

雪菜が過呼吸を起こす。

「雪菜、、雪菜、、息吐こう。出来るよ」

背中をさすり、目を見つめて声をかけ続けるが、雪菜はパニックになっており、上手くいかない。


「雪菜。」

冬弥はそう言って、ぎゅっと抱きしめる。


背中をさすり、もう片方の手で冷たくなって、震える手を握る。

耳元で雪菜怖くない、俺がいると囁いた。


突然、暖かさに包まれた…
ムスクの香りがする
安心する……


雪菜が顔をあげると、心配そうな表情をする冬弥と目が合う。


「と……うや……さん……」

苦しい呼吸で目に涙をためながら、小さな声で呼ぶ。

「そうだよ。もう大丈夫だから。」

冬弥は再度ギュッと抱きしめる。


「苦しいな。一緒に呼吸しよう。ハー吐いてーハー」


「ハーハッハッハーハー……」

雪菜は冬弥の手を握り返す。
冬弥が近くにいる。
その事だけが雪菜の精神をなんとか保たせた。


「上手だ。ハーハー。」

冬弥はずっと背をさすり、言葉をかけ続けた。

雪菜の呼吸が整う。

冬弥はサッと脈をはかり、もう大丈夫だと微笑んだ。



こくりと頷くと、雪菜は力尽きて、そこで意識を失った。