「桜ちゃんが雪菜ちゃんの家にあるもの取り返してあげようって言ったのよね。」

真希が言う。

雪菜が何も欲しがらないことを真希も気づいて気にしていたが、どうしたらよいか分からなかった。

上手くいくのなら桜の提案はいいと思った。

真面目に弱音も吐かず、頑張る雪菜に真希もかなり心を打たれていた。

「私は提案しただけ。実行したのは彼らだから。」

桜はそう言って雅人達を見つめる。

「ありがとうございました。」

涙を手で拭きながら、雪菜は再度頭を下げる。


「かわいくおはようございますってごはん渡されてさ、料理は美味いし、掃除も丁寧。
雪菜ちゃんのファンこの組めっちゃいるからな!ちなみに俺も笑
この話した時、みんな雪菜ちゃんのためになりたいって言ってたぞ!」

真也が話す。

「俺もファンっすねー。雪菜ちゃんの泣き顔拝顔出来たって自慢しよ。」

竜也が話し、

「俺も自慢よー。」
と他の組員がのる。

雪菜は恥ずかしくて、顔が真っ赤になる。


「どうやって取り返してくださったんですか?」

雪菜は純粋な疑問を口にする。

「あーーー、方法ね。それはちょっと秘密です笑
雪菜ちゃんは知らなくていいんだ。」

真也が朗らかに言う。


「あの……おじさん達はどうしてるんですか?」

「元気だったよ……。ムカつくほどにな。彼らに危害は加えてない。親父さんの命令だったから。俺は1発食らわせてやってもいいかと思ったけど。」

真也の声は聞いたことないほど低かった。


「元気なら良かったです!!」

雪菜の発言に静まる。


「なぜそんなことを言う。お前を売った人間だぞ。」

真也は相変わらず低い声で話す。


「売られたのはショックでしたけど、両親が死んでから、育ててくれたので。そこは感謝してるんです。」


「……そうか。そんな風に考えられるもんか……。」

真也は自分が雪菜の立場なら何がなんでも叔父夫婦に復讐するだろう。復讐の中でも彼らが1番苦しむ方法を考える。きっとここにいる雪菜以外の全員が俺と同じ発言をするだろう。

ただ雪菜は本当に元気で安心したというような表情だった。

彼女の心の温かさはこの裏社会にはないものだ。彼女にこの場所は似合わないな……


表の世界で幸せに生きるのが彼女には合ってる


誰もがそう感じただろう……