「また冬弥さんのスケッチ見たいです。」

雪菜はぽつりとつぶやく。

「あー、久しぶりに描くか。」

冬弥はそう言って自分の部屋から、スケッチブックと鉛筆を持ってきた。


何書こうかと少し迷ってから、手が動く。

白いスケッチに絵が少しずつ広がっていく。
初めは何を描いてるか分からなかった。


えっ……



そこには食堂で笑顔で働く雪菜がいた。

「まあこんなもんか。」

冬弥はそう言って、雪菜を見ると、雪菜の目には涙が浮かんでいた。

「どうした??」

冬弥が驚いた顔をする。


「私、こんな顔で働いてますか?みんなと馴染めてますか? 」

「あぁ。俺にはそう見えるけど。」

「良かった……。」
雪菜は囁くように言って、涙をこぼした。

絵の中の雪菜は明るくて、ここの家の人のように見えた。孤独感や悲壮感はなく、ただ純粋にその場を楽しんでいた。

自分の中のみんなとは違うという孤独感が溶けていくのがわかる。


「なぁ雪菜、お前はひとりじゃない。
1人で抱え込むな。なんでも頼れって言ったろ。」

冬弥はそう言って、雪菜の溢れる涙を手で拭く。


「冬弥さん……。」


雪菜はそう言って、冬弥の胸に飛び込んだ。
いろんな想いが溢れ出して涙が止まらない。
孤独も寂しさも怖さも何もかも。
16歳の少女の抱えこんだ大きな不安が弾けだした。


冬弥は何も言わず、そっと雪菜の背中を撫で続けた。