2人は雅人の運転でドライブする。

「ねえ、雅人。雪菜さ、何か欲しいものないかって言ったら、いつも断るんだよね。やっぱりまだ心開いてくれてないのかな?そりゃそんな簡単に心開けないのは分かるけどさ、私は雪菜好きだから、もっと仲良くなりたいんだよね。」

桜は話す。

「雪菜ちゃん、桜には心開いてる方だと思うよ。来た時に比べたら見違えるように明るくなった。桜には冗談とかも言えるようになってるみたいだし。
だけど、雪菜ちゃんの本当に欲しいものは手に入らない。欲しいものがないわけじゃない。手に入らないって分かってるから言えないんじゃないかな。」

「本当にほしいものって??学校に行きたいとかだよね。」

「そうだね。10歳で家族失って、養育先では冷たくされた。売り飛ばされて、楽しい場所だった学校も失う。それに怖い思いもしたんだ。今だって外出ひとつ出来やしない。
雪菜ちゃんはずっと自由と唯一の居場所を欲している気がする。」

雅人の言葉を聞いて、桜はハッとすると、寂しそうにする。

「……そうだよね。私、そんな簡単な事にも気づいてなかった。近くにいたのに。きっとお義母さんも気づいてるんだろうな。若頭の妻としてまだまだです……。」

落ち込む桜の頭を雅人はハンドルを握らない手で撫でる。

「桜の真っ直ぐな所に雪菜ちゃん絶対に救われてると思うよ。俺だってそう。桜の裏表がなくて、明るい性格はうちの若頭の妻には絶対必要です。
桜は桜のままでいいんだよ。」

雅人はそう言って、桜の唇にキスをした。

「……雅人、大好き。」

桜はそうつぶやいた。