「雪菜ちゃん!朝ありがとうね。助かったわ。」

1人食堂の様子を眺める雪菜に真希が声をかける。

「あっいえ。色々教えてくださってありがとうございます。」

雪菜はお礼を言う。

「あとは私と桜ちゃんでしておくから、朝ごはん食べてきていいわよって思ってるんだけど、こんな場所で食べにくいわよねー。」

真希と桜は来た人にプレートを渡したり、おかわりの人にごはんをよそったりしている。

みんなが食べ終わってからいつも2人でご飯食べているようだ。

義理の母娘の関係だが、今日みていて2人が仲良しなことはわかった。

「私、洗い物します!!」

食堂に行って、あの中に混じってご飯食べるなんて無理だ。

雪菜がそう言うと、冬弥が朝食を食べに来たのが見えた。

「あっ冬弥くん!ちょっといいかしら?」

真希が声をかける。

「姐さん、おはようございます。どうしたんですか?」

「雪菜ちゃんに朝食とってもらいたいんだけど、初めてだから、冬弥くん一緒に食べて教えてあげて。」

「そんなん悪いです。私、後で全然大丈夫ですから。」
雪菜は慌てて真希に言う。

冬弥には散々迷惑かけてきた。昨日は頼ってもいいって言ってくれたけど、それは大介や雅人に言われて渋々なことはわかっている。

「いいですよ。雪菜食べるぞ。」

「あっでも……」

「まだ病み上がりなんだ。栄養はしっかり取らないと。」

冬弥はそう言って、朝食のプレートを2つとる。

「いっておいで。雪菜ちゃん!」

真希に言われて、雪菜は頭を下げて、冬弥を追いかけた。




「冬弥めずらしー。」

桜はつぶやく。

冬弥はイケメンだから、モテるが、自分から女の子に話しかけたり、優しくしたりしない。そんな事をしている所を見たことがない。

桜や真希にも必要最低限しか話さない。桜ですら冬弥と2人きりでご飯なんて何話せばいいか分からない。

冬弥が朝食のプレートを2つもったのには驚いた。真希が頼めば断わりはしないと思ったが、嫌そうにするだろなと思ったのに、わざわざ雪菜を呼んで、彼女の体調を気遣う言葉まで言ってのけた。

「そうよねー。もしかして♡があるんじゃないかって思わない?」

真希が桜に話す。

「たしかにそうですね。今の反応は驚きました。」

真希は組長の妻だ。雪菜に親切にしたが、それは雪菜を見極めてのこと。
真希は人を見る目に長けている。伊達に組長の妻をしているわけではない。

冬弥が初めは雪菜の治療をめんどくさがっていたのに、嫌がらなくなっているのを少し不思議に思っていたが、昨日食堂に2人で来たのを見て確信した。

もちろん冬弥がまだ自分の気持ちに気づいていないこともわかっている。