真希と桜が思ったより、優しそうな人だったのでほっとした。

それからも冬弥が声をかけられる度に、雪菜も挨拶をする。

よく使うと言われる場所は周り、部屋に戻った。

「まあこんな感じ。疲れたか?」

距離としてはそこまで長くはないが、緊張と久しぶりに体を動かしたこともあって、疲労感がある。

「…大丈夫です。ありがとうございました。」

雪菜はぺこりと頭を下げる。

「まあ無理するな。ゆっくり休め。働くようになってもしんどかったら言うんだぞ。姐さんも体が1番って言ってたろ。」

「はい、頑張ります!」

雪菜は答える。

「ほんとに分かってる?雪菜はごめんなさい、大丈夫、頑張りますが口癖だからな。無理して、体壊すなよ。せっかく治したのに。」

冬弥がため息まじりに言う。

「…ごめんなさい。」

雪菜は下を向く。

「別に責めてるわけじゃない。忠告してんの!お前が無理してまた体悪くしたら、俺の医術疑われて、監督不行届くらうわ。俺は親父さんからもしっかり見守るよう言われてっから。」

冬弥の言葉に雪菜はふと寂しくなる
冬弥が優しくしてくれるのは上から指示されてるからだ。めんどくさいと思ってても、逆らえないから仕方なくやってくれてるのだろう。
最近、雪菜は冬弥といるのが嫌じゃなくなっていた、いやむしろ、落ち着く存在になっていた……


「冬弥さん、ごめんなさい。私がいたから、お仕事増えちゃいましたよね。治してもらったんだし、体壊さないように気をつけます。冬弥さんにこれ以上迷惑かけないようにしま……」

「別に迷惑なんて思ってないよ。これからも何かあれば頼ってくれたらいいから。」

冬弥は雪菜の言葉を遮り、目を見て告げる。
雪菜の雰囲気が暗くなり、寂しそうな表情を見て、なぜか言いたくなった。
はじめはめんどくさいと思った雪菜の存在が、最近は思わなくなっていた。



この気持ちが何なのか冬弥にはまだ分からなかった。