「良かったな、学校!」

冬弥が話す。

「ありがとうございます。」

雪菜が笑顔で返す。

「あの、お仕事って何をしたらいいんですか?」

「あー、料理、洗濯、掃除、ごみ捨てとか色々ある。俺は最近そういう仕事はしてねーから、詳しくは言えないけど、姐さんや桜さんに教えてもらえるんじゃないか。」

頑張る気持ちでいっぱいだが、不安がないわけじゃない。うまく馴染んでいけるだろうか。
姐さんや桜さんってどんな人なんだろう?

頭の中でぐるぐると思い悩む。

「ちょっと見に行ってみるか。雪菜、この部屋から出てなくて、体力も落ちてるだろうから、リハビリもかねて。」

「部屋から出てもいいんですか?」

雪菜はこの部屋から出たことはない。トイレやシャワーも備え付けになっていた。

「えっ、ああ。いいよ。雪菜が組員の人達見たら怖がるだろうから、部屋から出さないようにって指示されてただけ。ただ、ここで働くなら慣れてもらわなきゃ困るし、話は別。」

「私、脱走しないように見張るためかと思ってました。」

冬弥は驚いた顔をする。

「そんなわけないじゃん。その体で、この広い家から出ようなんてまず無理。女なんて姐さんと桜さんしかいないし、歩いただけですぐ捕まるよ。」

「そうなんですね。」

捕まるという言葉でまた少し不安になる。

「大丈夫!悪いことしなきゃ、怖いことはされないから。ほら行くぞ!!」

冬弥が襖を開けて、出るよう促した。