「あとこれ、持ってな。」

冬弥は雪菜の手にスマホを渡す。
まだ傷一つない新しいスマホだった。

「冬弥さん、スマホ新しくしたんですか?綺麗な画質ですね。」


「えっ、それ雪菜の。連絡出来ないのは不便だから、買っといた。」


雪菜の目が大きく見開かれる。


「そんなの悪いです。受け取れません。」

雪菜は冬弥にスマホを返そうとする。


「俺2個もスマホいらないし。それにこれからお互いの帰る時間とか連絡し合いたいから、持ってて。」


「本当にいいんですか??色々買ってもらってばかりです……。冬弥さんの大切なお金なのに…。」


雪菜は申し訳なさがつのる。


「これは俺が必要だと判断して買ったんだから気にしなくていいから。」

冬弥の優しさに胸が熱くなる。


「嬉しいです!!!私、スマホ持つの憧れてたんです!ありがとうございます。大切にします!!」


冬弥が謝罪より感謝を求めてくれている気がして、雪菜は笑顔いっぱいで感謝を伝える。


初期設定などを冬弥と一緒にやる。
みんなが楽しそうに連絡取り合ったり、写真を撮っているのを羨ましく思っていた。

スマホを持っていないことでグループ連絡にも加われず、蚊帳の外のような気がして寂しかったが、叔父夫婦の家ではスマホを買ってなんて贅沢を言える立場ではなかった。


初めての連絡先に冬弥の名前が入る。

「冬弥さん!!私たちお友達になれました!!冬弥さんが1番目の友達になれて嬉しいです!」

雪菜は自分のスマホを幸せそうに見つめる。


「明日、恵美達とも友達になろう!!」

雪菜の興奮はしばらく続いた。