バイクは速く、あっという間にホテルに着く。

バイクは初めは少し怖かったけど、慣れてくると爽快感があり、楽しかった。それに冬弥を近くに感じれて恥ずかしくも嬉しい。


「冬弥さん、バイク買ったんですか?」

雪菜はホテルに備え付けのお茶を冬弥の分も入れながら話す。


「あぁ。まあ中古だけど。」


「すごいですね。バイク初めて乗りました!」


「バイクは移動しやすくて、便利だからなー。
ツーリングにでも今度行くか。」


「行きたいです!!」


雪菜がニコニコと話すので、冬弥も笑顔になる。


「まあ主な使用目的はバイトだけどな。」

冬弥はぽつりとつぶやく。

「接客でいらっしゃいませとか嫌だから、フードデリバリーする予定。バイクで届けられるし、時間も自分で調整できるみたいだし。」


「なるほどです。冬弥さんの接客も見てみたいですけど笑」


「お前、絶対笑うだろ。」


「そんなことないですよ。冬弥さんイケメンだから人気店員になれます!」


「それはないなー。」

冬弥の嫌そうな顔を見て、雪菜は笑う。


「私もバイトしますね!!早く見つけないと。」




「雪菜さ、今日学校どうだった?」


突然話が変わるなと雪菜は思うが、今日恵美達と話せて楽しかった思い出を語る。


「それは良かったな。授業はどうだった?」


雪菜の顔が青ざめていくのがわかる。


「正直、全く分かりませんでした。あと3週間後にはテスト始まるのに…。やばいです。」


「まずはテスト乗り切ってからにしろ。今は進級できるか考えるんだ。」

冬弥の正論が突き刺さる。


「それはそうですけど、、、。
冬弥さんだって勉強あるじゃないですか。
医学部って難しいし。」


冬弥に養ってもらうのは申し訳ない。それに冬弥だって医学部の受験があるんだ。看護学部よりはるかに医学部の難易度は高い。



「まあな。だけど、今は俺のことより自分の心配しろよ。留年したら、友達とクラス変わるんだろ?
俺はバイトの合間とかに勉強するし。
まだ受験まで1年くらいあるからな。」


冬弥は組を出ることになり、医学部について調べていた。初めは来年には大学行けるんじゃないかと思っていたが、大学入学共通テストや医学部の過去問を見て、難しく、11月の今からでは間に合わないと思った。
私学は高くて学費が払えないし、国立一本となると今からでも少しずつ勉強しなくてはいけない。
医者になると宣言して、組を出たのになれなかったじゃ、カッコがつかない。

「とにかく、テスト終わるまではバイトはしなくていいから。俺が働くし、なんとかなるから。」

冬弥の有無を言わさない雰囲気を感じる。
雪菜にとっては助かる提案であり、ありがとうございますと頭を下げた。