近くて遠い幼なじみの恋~私の大好き過ぎる片思い日和~

あーちゃんは二人の前で漆塗りの黒い箱を開けた。

「婚約にはお断りを伝えさせて頂きました。破談になるはずの婚約を仕組んだお二人が1番理由を分かってらっしゃるのでは?」

二人って事はうちの祖父もあーちゃんの婚約に一役買ったと言う事になる。

「先方の銀行頭取である神崎(かんざき)会長の御父上とお二人は昔からのご友人だとお聞きしました。融資と引き換えにと聞いてたお見合いの話も理由があると」

「うむ」と柊じいちゃんはアゴに手をやった。

「お相手の遥菜(はるな)さんにも思いを寄せた方がいるのもご存知だったんですよね?」

諦めたように祖父達は苦笑いする。

「今後の他県に建設予定のホテルに関する融資は再度見直しまして銀行とは別に5社ほど融資をしたいとお話を頂いてますので大旦那にも一度目を通して頂きたいと思います」

「ほう。短期間でよくそこまで結果を出したな」

柊じいちゃんは老眼鏡をかけてじっくりと書類に目を通した。

「幸はどうするつもりだ?」

祖父の問いかけに今度は私が答える番。

「私も絢さんと結婚したいです。
スイスにも付いていくつもり。魚屋はじいちゃんと父さんに3年はお願いしたい…です。それまでに経営も勉強するし早起きも頑張る…つもり…」

早起きを自分で口にして“しまった”とは思ったけど出た言葉は消し去る事は出来ない。

2人の祖父は顔を見合わせて頷き、柊じいちゃんは口を開いた。

「鰯よ、ワシらの負けかな」

「破談になる結納とかお金のかかる大掛かりなことをしましたね。皆んな巻き込んで何をやってるんですか」

あーちゃんの言葉に二人の御老人は首を竦めた。

「だいたいお前達がさっさとくっつけば…ん?これは」

箱の中にまだ何か見つけたらしく古い紙切れを出して今日何度目かの目を見開いた。

「最初から負けじゃないか」
「婆さんは先をよんでたようじゃな」
「あーちゃん、何て書いてあるの?」

皆んなの反応が凄く気になって耳打ちする。