近くて遠い幼なじみの恋~私の大好き過ぎる片思い日和~

「みわ、」

入口を掃除する美和子さんが見え声を掛けようとして咄嗟に隠れた。

「私にやらせて下さい」

「そんな、お客様なのに」

お客様というには違和感を感じる距離感。
艶やかな付け下げを着て掃除をしようとする人なんて1人しか居ない。

「婚約者…さん」

タイトにまとめられた黒髪に遠目でも分かる上品な美しさ。

(私は…)

寝起きの寝癖付きのショートヘアにTシャツとハーフパンツ。

こんな姿で何を話すの?

「幸?」

「こ、こんにちは」

声掛けられて振り返ると散歩帰りの柊じいちゃんの姿。

「入らんのか?」

こんな姿でこの入口は超えられない。
黙って首を横に振った。

「いつもそうじゃ。お前はここから入ろうとしない。入れば良いものを」

「決めてるからだもん…それに分かってるから!自分が居られる場所じゃないことくらい」

あーちゃんを好きなくせにずっと根底にある冷泉の格式の高さと重圧。

「お前の場所…?それはワシには分からんが」

右手に持っていた杖を両手に持ち変えて、

「絢の場所は幸の所と思うがのう」

いつもの見透かした顔で私を見据える。

「じいちゃんのその顔大嫌い」

「そうかそうか。ワシはそんな幸と絢が
若くて可愛くて羨ましいけどな」

いつも怖くて厳しいじいちゃんのくせに
たまに優しい所はあーちゃんのじいちゃんだと凄く感じる。

「お前は本当に美津(みつ)さんの孫じゃのう。泣きそうな顔は美津さんにそっくり」

美津とは3年前に病気で無くなった祖母の
名前。

「鰯に取られたけどな。ククッ」

懐かしいのか寂しいのか昔を思い出して
笑うじいちゃんは楽しそう。