『桜井さん、今日もファンアート描いてた?』


『え、あ、うん……』


バイト終わり、蓮くんに話しかけられた。


私はドキッとしながらも、うまく笑えなかった。


『前に見せてくれたやつ、クオリティすごかった。プロ目指してるとか?』


『そんな、全然……ただの自己満……』


うまく話せない。だってこの人が、本当に“本人”だったら……。


気まずい空気に耐えきれず、私はカバンを持って先に出た。


その後ろ姿を、彼はじっと見つめていたことを、私は知らなかった。