カップにお湯を注ぎながら、私は無意識にスマホ画面を見つめていた。


白と青の配色が特徴的なライブ配信アプリ。その中央に表示された、通知の赤い丸が点滅している。


──「天音ルイ」が配信を開始しました。


それだけで、鼓動が早くなるのが分かる。


推しの声を聞くだけで、今日1日の疲れなんて、まるっと吹き飛んでしまうんだ。


イヤホンをつけて、ベッドにダイブする。


『こんばんは、天音ルイです。今日も、来てくれてありがと』


その声が流れた瞬間、胸がぎゅっと苦しくなる。


『……はぁ……やっぱり好き……』


思わず吐き出すように呟いてしまって、顔が熱くなった。


彼は画面の向こうの人。会えるわけなんてない。


それでも私は、彼の配信を毎日欠かさずチェックして、ファンアートも描いて、何度もギフトしてる。


“幸せになってほしい”


“でも誰かに取られるのは嫌”


そんな矛盾を抱えながら、今日も画面の中の推しに恋していた。