数日後の地方でのライブは、いつにも増して熱気に満ちていた。

ステージ上で完璧なパフォーマンスを終えて

ホテルに戻ったまなみは、達成感と心地よい疲労感に包まれていた。

「まなみ〜、まみ~、お菓子もう少し欲しいな〜!
これじゃ全然足りないよ!( ・᷄ὢ・᷅ )」


リビングルームでくつろいでいたりおが、無邪気に叫んだ。

ライブ後の打ち上げも兼ねて、ホテルの一室でコンビニのお菓子を持ち寄ってパーティーをしていた。


時間は夜の十時を少し回ったところだ。


りおが無邪気に言う
「じゃあジャンケンで負けた人が行こ!!」


3人はジャンケンをした。
りお グー
まなみ チョキ
まみ グー


「負けたぁーー!!!もぅ!わかった!
買ってきます!!(`・н・´)」


まなみはそう言って、財布とスマホだけ持って部屋を出た。ホテルの近くのコンビニまでは、歩いて十分ほど。


コンビニの袋を手に、来た道を戻っていると、少し開けた場所に差し掛かった。


その時、前から歩いてきた数人の男性とすれ違った。
彼らは酒でも飲んでいるのだろうか、大声で笑い合い、見るからにいかつい雰囲気を漂わせていた。


まなみは俯き加減に、足早に通り過ぎようとした。
しかし、そんな彼女の存在に気づいた一人が、ニヤリと笑った。


「あれぇ?こんな夜中に、女の子一人でどこいくの?」


もう一人が、まなみの行く手を阻むように前に立ちはだかる。

背中に冷たい汗が伝う。国民的アイドルとして、これまで何万という人々に会ってきたけど、こんなにも恐怖を感じる視線は初めてだった。


「あれ???もしかしてスターライト・ドールズの
五十嵐まなみちゃんじゃない? ひとりぼっち?
メンバーはどこに行ったのかなぁ?」


彼らはまなみが持っていたコンビニの袋を覗き込み、ゲラゲラと笑う。
震える手でスマホを握りしめるが、助けを呼ぶこともできない。


「あの、私、急いでいるので……」

精一杯の勇気を振り絞ってそう言ったが、彼らは彼女を囲んでいるままだ。

恐怖で足がすくみ、動くことができない。まさにその時、背後から低い声が聞こえた。

「その手を離してください。」


振り返るまなみは思わず

「あなたは… !」


まなみの目に映ったのは紛れもない川上勝だった。

彼は、あの握手会で見た時と同じ、地味な姿だ。

しかし、その佇まいは、数人のいかつい男たちを前にしても微動だにしない。

むしろ、静かな怒りを秘めた瞳が、男たちを射抜いていた。