「初めまして、五十嵐まなみです!」
そう言って、ステージの向こうから差し出されたのは、あまりにも完璧な、透き通るような白い手だった。目の前にいる彼女は、まぎれもない国民的アイドルグループ「スターライト・ドールズ」の青色担当、五十嵐まなみ。テレビや雑誌でしか見たことのない輝きが、今、目の前にある。
一方、その手を恐る恐る握り返したのは、ごく普通の、いや、むしろ地味と言われることの方が多い男、川上勝だった。休日もTシャツにジーンズ、趣味は図書館での読書という彼にとって、アイドルとの接触など、まさに天文学的な確率。
勝は人生に落胆している時期があり、家に籠ることか
あった。その時にテレビに映るまなみの笑顔に虜になったのがきっかけで、今日が彼にとって初現場であった。
「あ、あの、川上です……」
かろうじて絞り出した声は、ひどく掠れて聞こえた。勝は自分の手のひらにじんわりと汗が滲むのを感じた。
こんなにも柔らかく、温かい手を握ったのはいつぶりだろう。いや、こんなにも美しい手を握ったことなど、生まれてこの方一度もない。
まなみはそんな勝の様子に気づいたのか、ふわりと微笑んだ。
「いつも応援ありがとうございます! 今日は来てくれて嬉しいな♡」
わずか数秒の握手は、勝にとって永遠とも思える時間だった。隣のスタッフに促され、彼は名残惜しそうに手を離した。握手会の列を離れても、彼の右手のひらには、まなみの手の温もりが幻のように残っていた。
「……信じられない」
会場を出て、勝はぽつりと呟いた。彼の日常に、こんなにも眩しい光が差し込むことがあるなんて。
まなみがその勝の後ろ姿をじっと見ていたことを
勝は気づいてはいなかった。
そう言って、ステージの向こうから差し出されたのは、あまりにも完璧な、透き通るような白い手だった。目の前にいる彼女は、まぎれもない国民的アイドルグループ「スターライト・ドールズ」の青色担当、五十嵐まなみ。テレビや雑誌でしか見たことのない輝きが、今、目の前にある。
一方、その手を恐る恐る握り返したのは、ごく普通の、いや、むしろ地味と言われることの方が多い男、川上勝だった。休日もTシャツにジーンズ、趣味は図書館での読書という彼にとって、アイドルとの接触など、まさに天文学的な確率。
勝は人生に落胆している時期があり、家に籠ることか
あった。その時にテレビに映るまなみの笑顔に虜になったのがきっかけで、今日が彼にとって初現場であった。
「あ、あの、川上です……」
かろうじて絞り出した声は、ひどく掠れて聞こえた。勝は自分の手のひらにじんわりと汗が滲むのを感じた。
こんなにも柔らかく、温かい手を握ったのはいつぶりだろう。いや、こんなにも美しい手を握ったことなど、生まれてこの方一度もない。
まなみはそんな勝の様子に気づいたのか、ふわりと微笑んだ。
「いつも応援ありがとうございます! 今日は来てくれて嬉しいな♡」
わずか数秒の握手は、勝にとって永遠とも思える時間だった。隣のスタッフに促され、彼は名残惜しそうに手を離した。握手会の列を離れても、彼の右手のひらには、まなみの手の温もりが幻のように残っていた。
「……信じられない」
会場を出て、勝はぽつりと呟いた。彼の日常に、こんなにも眩しい光が差し込むことがあるなんて。
まなみがその勝の後ろ姿をじっと見ていたことを
勝は気づいてはいなかった。
