コーディアナは二度、三度とまばたきをした。
南国のうだる暑さで頭がぼんやりしているのかもしれない。
だから祖国の亡霊を見ているのだろうか。それにしても趣味が悪い。嫌いな男の幻を見るなんて。
「俺は幻じゃないし死んでもいない」
「わたしの! 頭の中を! 読まないで!」
「いや全部おまえが口から垂れ流してるんだが」
「うるっさい」
コーディアナは一喝し、彼女のかたわらでひざまずくエリンに目をやった。
「エリン、正直に答えて」
「はい、コーディアナ様」
「いくら渡されたの」
「ふふ、金銭ではございません」
「やだ、やだ、何もらったの?」
「形のないものでございます」
コーディアナはおそれおののいた。
金品にのみ価値を見出すあのエリンが、形のないもの、などと世迷言を言い出したのだ。
はっきり言っておそろしい。
「愛……とか言わないわよね?」
身分差恋愛は物語の中でのみ幸せになれる。現実はまあ、厳しい。
「いやですわ、そんな薄ら寒くて薄っぺらい言葉、口に出さないでくださいな」
冷たい一瞥を食らったが、コーディアナはむしろ胸をなでおろした。
エリンの次の発言を聞くまでは。
「わが弟に第二神官長の位をいただきました。もったいないことでございます」
「権力ですか、そうですか……!」
コーディアナはがっくりとこうべを垂れた。
南国のうだる暑さで頭がぼんやりしているのかもしれない。
だから祖国の亡霊を見ているのだろうか。それにしても趣味が悪い。嫌いな男の幻を見るなんて。
「俺は幻じゃないし死んでもいない」
「わたしの! 頭の中を! 読まないで!」
「いや全部おまえが口から垂れ流してるんだが」
「うるっさい」
コーディアナは一喝し、彼女のかたわらでひざまずくエリンに目をやった。
「エリン、正直に答えて」
「はい、コーディアナ様」
「いくら渡されたの」
「ふふ、金銭ではございません」
「やだ、やだ、何もらったの?」
「形のないものでございます」
コーディアナはおそれおののいた。
金品にのみ価値を見出すあのエリンが、形のないもの、などと世迷言を言い出したのだ。
はっきり言っておそろしい。
「愛……とか言わないわよね?」
身分差恋愛は物語の中でのみ幸せになれる。現実はまあ、厳しい。
「いやですわ、そんな薄ら寒くて薄っぺらい言葉、口に出さないでくださいな」
冷たい一瞥を食らったが、コーディアナはむしろ胸をなでおろした。
エリンの次の発言を聞くまでは。
「わが弟に第二神官長の位をいただきました。もったいないことでございます」
「権力ですか、そうですか……!」
コーディアナはがっくりとこうべを垂れた。
