極上の一杯を、いつか君に。

「楠さん?
随分時間かかってるけど、手伝いますか?」

先週入ってきたばかりの新人アルバイトくんの声だ。
私と同い年。

名前は、橘 貴志(たちばな たかし)
バリスタになって、カフェを開く夢があるらしい。

夢があるって、いいなぁ。

「大丈夫ですー!
今、戻りますね」

封筒は、カフェのロッカーに押し込んだ。

何でもないように笑顔を作ったが、ちゃんと笑えていただろうか。

カフェを出て、今度こそ帰ろうと、駅に向かった瞬間。

私のスマホが着信を告げた。
知らない番号だ。

『初めまして。
楠 成美(くすのき なるみ)さんの娘さんね。

私の娘の深明(みあ)がお世話になってます。
貴女の母親が睡眠薬自殺を図ろうとして、失敗したみたいなの。

今は処置中よ。
おそらく、強制的に入院になるわ。

貴女の担任の先生にあなたの家族のことを連絡したら、話があるみたいでね。

成都輪生大学病院(せいとりんせいだいがくびょういん)に来られるかしら?』

「すぐに行きます」