極上の一杯を、いつか君に。

閉店後、店の下げ札を『本日の営業は終了しました』に変えて、シャッターを閉める。

人の気配がしたので、振り向きざまに閉店したことを告げた。

「本日は営業終了いたしました。
また明日のご来店をお待ちしております」

「その声、真結、だろ?
すっかり大人になって。

ますます似てきたな、アイツに」

少し白髪は目立ってきたけれど、一重の目元と笑ったときのエクボは、私と同じ。

間違えるはずがない。

楠 浩一(くすのき こういち)
私が中学1年生だったとき、私と母を置いて、家を出た男の人。
私の父親だった人。

「……何よ。
今更父親ヅラするつもり?
私、未だにアンタのこと、許してないから」

私のエプロンのポケットに、分厚い封筒をねじ込んできた。

「養育費と、お前の誕生日をずっと放っていたからな。
受け取ってくれ」

「いらない。
アンタのせいで、お母さんがカウンセリング受ける羽目になったのに。

今のお母さんがどんな状況か、知らないでしょ、アンタ」

今すぐにでも目の前の男の顔を引っ叩いてやりたいくらいだ。
必死に拳を握って、その感情を抑えた。

「真結は今でも血の繋がった、俺の子だ。
親としての責任は果たしたい。
真結。

お前自身の未来の幸せのために、使ってくれ」

それだけ言って、くるりと背を向けた。