極上の一杯を、いつか君に。

5月になり、体育祭の時期となった。

私は、競技には出ず、応援団をやることになった。

競技決めのロングホームルームの後に、松倉先生がそういえば、転入生を紹介するのを忘れてた、と言った。

グレーのブレザーに、赤と黄色のチェックが入ったグレーベースのスラックス。
オリーブみたいな緑のネクタイ。

まだ着慣れていない制服に身を包んでいたのは、他ならぬ貴志その人だった。

橘 貴志(たちばな たかし)です。
わけあって、学園近くの寮から通っています。

まだ分からないことだらけなので、いろいろ教えてくれると嬉しいです。
宜しくお願いします」

丁寧に頭を下げる仕草が、カフェでアルバイトをしているときのそれと同じで、胸が高鳴った。

私が熱のこもった目で貴志を見つめていたことに、彼が気付いていませんように。

あっという間に、クラス中から質問攻めにされる彼が少し気の毒だった。

「橘くんとどんな関係?
ただの親友って感じじゃなさそうだけど」

「貴志くんを見つめる目が
恋する女の子のそれだったからね?
隠してもモロバレだかんね」

さすが、麗菜と深明は、それぞれの彼氏とラブラブなだけある。