○大学講義室
講義を受ける朱梛。少し離れたところで真剣に講義を受ける耀哉。
朱梛「…………」※耀哉に熱視線を送る
美冬「…………」※そんな朱梛を見つめる
○食堂
美冬「朱梛ってさ、芥川くんのこと好きなの?」
朱梛「ぶっ」
パスタを吹き出しそうになる朱梛。
朱梛「なっ、なんでっ!?」
美冬「だって講義聞いてる時ずっと芥川くんのこと見てたじゃない」
朱梛「み、見てないよ」
美冬「見てました〜。ちゃんと教授の話聞いてた?」
朱梛「聞いてたよ……」
美冬「ほんとにー?」
朱梛「ほんとだって。耀哉くんのことは卒業するって決めたんだから」
美冬「卒業?」
口を滑らせた、と焦る朱梛。
美冬「卒業って、何?」※じっとり
朱梛「…………」
美冬にすべてを打ち明ける朱梛。
美冬「じゃあ10年以上片想いしてるの!?」
朱梛「してたけど、やめるの!」
美冬「なんで? せっかく同じ大学に入ったのに?」
朱梛「だって、耀哉くんにとって私はいつまでも子どもだし……。耀哉くんの邪魔したくないから」
美冬「邪魔?」
朱梛「耀哉くん、県下で一番偏差値の高い高校で首席だったのに大学行かずに就職したの。お母さんと弟支えるために」
美冬「すごいね」
朱梛「本当は大学に行きたかったのに家族のために我慢して、やっと自分のやりたいこと頑張ってるんだもん。邪魔したくないよ」
美冬「そっか……」
朱梛「だから、私は私で大学生活楽しむんだ! 素敵な彼氏もつくるの!」
美冬「朱梛はそれでいいの?」
朱梛「いい!」
美冬「じゃあ合コン行ってみる?」
朱梛「えっ、合コン?」
美冬「うん、友達が一人探しててさ。私はその日バイトだから行けなくて。M大だってよ、どう?」
朱梛「行ってみたい!」
朱梛モノローグ:
「何事も自分から飛び込まないと始まらない! 今度こそ素敵な出会いがありますように……!!」
○夜・とあるレストラン
おしゃれして合コンに参加しに来た朱梛。
朱梛(やばい、緊張する〜〜)※ドキドキ
アイ「朱梛ちゃんだよね!今日はよろしくね!」
マリ「美冬から聞いてるよー」
朱梛「よ、よろしくお願いします!」
他にも二人いて朱梛を入れて女子5人。5:5の合コン。
レストランの中に入ると男子4人が既にいる。
ケイスケ「お、こっちこっち!」
タイチ「ごめん、こっちあと一人遅れてくるんだわ」
アイ「オッケー!」
朱梛(ドキドキ)
乾杯とともに合コンが始まる。
朱梛「慶明大の一葉朱梛です! よろしくお願いします……っ」
ケイスケ「緊張してる? かわいいなぁ」
???「ごめん、遅れた」
タイチ「おせーぞ、中原ァ!」
中原「……悪い」
中原侑の登場。
気だるそうだけどものすごくイケメン。
朱梛(わあ……っ、ちょっとカッコいいかも……)
タイチ「ほら、自己紹介しろって」
中原「……中原侑です」
ケイスケ「ごめんな! 無愛想だけど悪いやつじゃないから!」
○二次会・カラオケ
何となく二次会まできたが、人見知りして上手く話せずにいる朱梛。
朱梛(どうしよう……。全然ノリについていけない)
ケイスケ「あれ? 朱梛ちゃん歌ってなくない?」
朱梛「私、歌下手だから……」
ケイスケ「いいじゃん! せっかくだし歌おうよ」
朱梛「あ、でも……」
朱梛(どうしよう、最近流行りの曲とか知らないよ〜!! いつも耀哉くん家とアニソンばっかり歌ってるし!)
〜回想〜
朱梛ファミリー、耀哉ファミリーでアニソン大合唱するシーン。
〜回想終了〜
中原「…………」
中原が立ち上がり、デンモクを取り上げる。
中原「俺歌うからあんたはこれね」
タンバリンを押し付ける中原。
朱梛「!?」
ケイスケ「中原歌うか! いけいけー!」
歌い始める中原。タンバリンを叩く朱梛。
朱梛(もしかして、助けてくれたのかな……?)
○カラオケ・ドリンクバー前
朱梛「あの! さっきはありがとう」
中原「何が?」
朱梛「さりげなく助けてくれたでしょ?」
中原「別に」
ドリンクを持って部屋に戻ろうとする中原。
その拍子にスマホを落とす。
朱梛「あっ、落としたよ……」
スマホを拾う朱梛。スマホケースにはカードが入っている。
朱梛「えっこのカードって、夏目先生の新刊買った時についてきたやつ!」
思わず声をあげる朱梛。
中原「えっ」
朱梛「ほら! 私も持ってるもん!」
同じカードを見せる朱梛。
中原「……夏目はゆる、好きなの?」
朱梛「大好き! 本は全部持ってるし、WEBでも読んでるよ」
中原「マジか。俺も好きなんだよね」
朱梛「ほんとに!? どれが好き?」
中原「『君との空色』かな」
朱梛「わかる! あれめちゃくちゃ泣けるよね!」
朱梛(嬉しい! まさか夏目先生ファンに会えるなんて……!)
中原「……一葉さんってそんな風に笑うんだな」
朱梛「え?」
中原「なんかずっと能面みたいに笑顔貼り付けてたから」
朱梛「人見知りしてたの! 中原くんだってそんなに喋る人だと思わなかった」
中原「だって数合わせに参加しただけだったから、気の合うやつがいると思えなかったし」
朱梛(あれ? もしかして、いい感じ……?)
朱梛のスマホが鳴る。メッセージの通知音。
朱梛「ちょっとごめんね」
耀哉からのメッセージ
《今どこ?》
《迎えに行くから場所教えて》
朱梛「!」※ドキッと
返信を送信する。
《今カラオケ》
《もう少しで帰るから大丈夫》
電話がかかってくる。
朱梛「! もしもし?」
耀哉《どこのカラオケにいるの?》
朱梛「迎えに来なくていいってば!」
耀哉《ダメだよ、危ないでしょ》
朱梛「子ども扱いしないでってば!」
ちょいちょいと朱梛をこづく中原、小声で囁く。
中原「あいつらには上手く言っとくから先帰っていいよ」
朱梛「え、でも」
中原「お金は俺が預かっとくし。お父さん、心配してるんだろ?」
朱梛「え、いや……ううん、お願いします」
朱梛(お父さんかぁ……そういう風に聞こえるよね)
○カラオケの前
耀哉「朱梛!」
朱梛「……」※ジト目
耀哉「何?」
朱梛「耀哉くんは私のお父さん!?」
耀哉「え?」
朱梛「もう大学生なんだから一人で帰れるよ!」
プイッとそっぽを向いて歩き始める朱梛。耀哉もその隣を歩く。
耀哉「……誰とカラオケ行ってたの?」
朱梛「誰だっていいでしょ」
耀哉「男もいたの?」
朱梛「耀哉くんには関係ないでしょ」
耀哉「あるよ」
耀哉の真顔。思わずドキッとする朱梛。
耀哉「朱梛、なんでそんなに彼氏が欲しいの?」
朱梛「なんで、って……」
朱梛(耀哉くん以外の人を好きになりたいからだよ――……なのに、)
朱梛「っ、私に彼氏ができたら困ることでもあるの?」
耀哉「あるよ」
朱梛「!」
耀哉「朱梛に彼氏なんてつくって欲しくない」
耀哉の真剣な表情。見せ場のシーンなのでよりイケメンに。
朱梛「な、なんで……」
耀哉「朱梛、俺は――」
朱梛「わーーーーっっ!!」
大声をあげて耀哉の言葉を遮る朱梛。
真っ赤になって駆け出す。
耀哉「朱梛!」
朱梛(なになに!? どういうこと!? もしかして耀哉くん、私のこと――)
耀哉「朱梛、危ない!」
朱梛「え?」
目の前を車が走る。接触しそうになったところを耀哉が助ける。
抱きしめられるような形で抱え込まれる朱梛。
車が走り去る。
耀哉「ったく、危ないだろ……」
朱梛「あ、ありがとう……」
耀哉「やっぱり朱梛には俺がついてないとダメだと思う」
朱梛「っ!」
朱梛(やっぱりそういう意味か……。耀哉くんにとって私はどう足掻いても子どもなんだよね……)
朱梛モノローグ:
「どうしたら私は耀哉くんに意識してもらえるの――?」
朱梛「〜〜っっ」※ポロポロと涙を流す
耀哉「朱梛!? もしかしてどこか打った!? どこか痛い……、」
朱梛「――耀哉くんのばかっ!」
泣きながら振り返る朱梛のアップ。
耀哉「朱梛!」
朱梛モノローグ:
「私はこんな風な思いを何度もしてきた。耀哉くんに子ども扱いされる度にすごく苦しくて――、でもどうしても好きな気持ちがやめられない」
朱梛モノローグ:
「私はどうしたら耀哉くんから卒業できるの――?」



