会いたくて逢いたくても彼はいない。~ Where Yesterday Sleeps(昨日が眠る場所)~

「そのまま直帰します」

ランチしてそのまま取材に行こう。
こんな愚痴を聞くのも面倒で無駄な時間。

何年使いかも忘れたベージュのバッグに
資料とパソコンを入れて席を立つと
「愛想なし」悪意ありありの言葉。

面倒くさい人達。
周りばかり批難して何もしようとしない。
そのくせ出る杭は打ちまくる。

バカらしい悪意に満ちた言葉なんてどうでも良いと彼女達を無視して私は部署を後にした。


ハンバーグ…
チキン南蛮…
カレーライス?
うーん、ちょっと重いかな。

イヤなことは美味しい食事でお腹を満たしてサッと脳内から追い出したい。

眠れないし食欲が凄くあるわけじゃないけど何かをお腹に入れないと体力維持が難しくなる。

「おい、鈴木ー」

声のする方向を振り返る。

「近藤(こんどう)くん、何か用?」

「出て行くの見えたから昼飯でもどうかと思って」

近藤 良哉(りょうや)も同期で光と私と3人仲が良い。

「うーん。食べたいんだけどその後取材なんだよね」

部署的には全く違うのに入社当時から何かと私達は相談して助け合って頑張ってきた。

「俺もそのまま営業に出るから一緒に食べて別れるか?」

「近藤くんの奢りならね」

「仕方ねぇーな」

「ごちそうさまです」と手を併せると二人で笑いあってエレベーターに乗り込んだ。