会いたくて逢いたくても彼はいない。～ Where Yesterday Sleeps（昨日が眠る場所)～

「それただの言い訳。面倒がってたら幸せは、あ、時間切れ…私も戻るわ」

白衣のポケットが揺れたらしく最後までは言わずに携帯を取り出し溜め息を吐いた。

「何か進展あったら連絡して」

進展するような話題もないとは思うけど適度に微笑んで頷いた。

「二人とも忙しそうだな…」

５年前から宇宙ビジネスの分野に着手することになり光はロケット部品の研究開発で毎日が忙しい。

「私も準備しなきゃ」

社員が自由に使えるフリースペースのカフェで広げた資料とノートパソコンを手に自分の所属課のフロアに戻る準備を始めた。

鈴木 莉桜　28歳。
海向総合商社 入社５年目の広報部所属。
一応、清潔感は大事にした服装と地毛の茶色の髪を生かしたセミロングのおかげで
一般的な女子の見た目は保たれてる。

「鈴木さん、平井企画の江本(えもと）さんが１４時に現地集合って連絡ありました」

「分かりました。ありがとうございます」

仕事内容は自社製品アピールの為の広告やSNS管理が主で来年オープン予定の
“海と宇宙のテーマパーク”の担当を任せられたばかり。

「鈴木さんが担当なんて」

コソコソ聞こえてくる声は無視。

「あの人、協調性ないじゃない？」

めちゃくちゃ分かりやすい嫌味と言うか妬み。

世界的に有名なホテルグループのアンナグランデも海向(kaiko-)の大型商業施設内にリゾートホテルを併設するのも大きな話題で
アンバサダーに有名アイドルや俳優さんが器用されることが話題性を大きくしてる。

そんな大きなプロジェクトだから有名人と
お近づきになりたい彼女達は担当になりたかったみたいで妬み僻みの嵐。

「鈴木さんお見合いしか、ねぇ～」
「有名人とか興味ないから選ばれたんでしょ」
「仕事命的な？」

勝手に好きに言って下さい。

仕事なんだから有名人とか関係ないと思うんだけど彼女達にはそれが一番関係があるらしい。