会いたくて逢いたくても彼はいない。~ Where Yesterday Sleeps(昨日が眠る場所)~

“月が綺麗ですね”から“I Love You”と表現した夏目漱石の素敵な言葉で深い話。

この言葉以上、以下でもない。
この時先輩の言った“月にも負けない星も最高だろ”と呟いた言葉に“助けて”と心の声を聞いた気がした。


私は今夜も眠れない。
思い出の一部なんだしと自分に言い聞かせてもこの時季になると鮮やかすぎる記憶は私を寝かせてくれない。

「…気持ち悪い」

寝汗でベタベタになったTシャツを着替え冷蔵庫から取り出したペットボトルにそのまま口を付けた。



「呪いね」
「祟りじゃないですか」

昼食代わりにと手に持った甘いカフェラテを吹き出してコップを落としそうになる。

「現実主義の莉桜もそう思わない?あぁ…その顏やっぱり何も思わないのね」

5・6階用のフリースペースに映し出されたテレビのインタビューと心霊現象に女性課長の江本 奈緒子(えもとなおこ)と同期の長谷 光(はせひかり)が顔を強張らせてる。

現実主義。
ただこの手の怖い話に興味がないだけなんだけどね。
お昼の番組でこんなの見たって聞いたって何も怖さを感じない。

「私は出てきて欲しいくらいですけどね」

カップを置いて黙々とノートパソコンを打ち続ける。

「えーっ?怖くないの?!」

驚く光に「全然」と答えて資料に目をやった。

怖さよりむしろ枕元に立って欲しいくらい。
立ってくれたら、

「寝込みを襲う気ですか?」

罵声をガンガン浴びせて、そして…殴り倒す!

これは触れられたらの話なんですけどね。