「あ、何か書いて、」

チケットの裏に力を振り絞って書いてくれた文字。

ーシリウスから見守ってる

二人の仲の良い夫婦が別々に天に上り離れた場所で星になり逢うことが出来ず千年の時間をかけお互いが星屑を集めて星の橋を作りシリウス(おおいぬ座)で逢うことが出来たと言うフィンランドのお話。

この話が先輩と私は大好きだった。

10年の時を経てやっと先輩の心が聞けた気がする。
本当ならまだ聞きたいこと話したいことがたくさんある。

それはまた私が星になれば聞けるし話も出来る。
未来への楽しみに取って置くのも悪くない。

「先輩、やっと…逢えた」

でも、

「今度は先輩が待つ番ですからね」

私が絞り出した言葉に答えるよう星が流れて消えて行った。



「目が腫れてますけど…」

今朝まで会ってた西野さんと最後の思い出の場所プラネタリウムで夕方待ち合わせをして入館した。

「目は気にならないけど一番気になるのはあの二人」

それは光と良哉のこと。
私達が帰宅すると二人は仲良さそうに眠ってた。

「どうですかね。でも幸せになって欲しいです」

「俺は…鈴木さんにも幸せになって欲しいけどね」

そう隣で呟くと館内は暗くなり夏の大三角形の説明と綺麗な星空が広がった。

こと座のベガ、わし座のアルタイル、はくちょう座のデネブの3つの1等星を結んでできる。
先輩が待ってるシリウスは冬の大三角形代表の星。

「また冬に見たいです」

呟く私。

「プラネタリウムでってこと?」

そう呟いた西野さん。

「どうですかね…」

それは今後次第でまだ何も進まない。
私と西野さんの思い出探しは幕を閉じた。