ー迎えに行くから待ってて。

先輩が私に残した最後のメッセージとプラネタリウムのチケット。

もう私の所にはないけど大切にしてた。
逢えないことなんて分かってた…だからお見合いで忘れることが出来るならって思って。

「彗の最後の言葉をやっと伝えられる」

「ど、どう言う…」

西野さんの言葉の意味が分からず涙だけが溢れる。

それを今頃なんで…?

「伝えたら苦しさが倍になるのかもと思って言えなかった。でも鈴木さんは彗の全部を分かりたいんだよね」

凄く優しい人なんだと思う。
私のことを考えて自分一人の中に閉じ込めてくれてたんだ。

「教えて下さい」

真っすぐ西野さんを見つめた。
ずっと先輩のことを待ってた私への最後の言葉。

「約束を守れなくてごめん。莉桜ちゃんは俺のいつも近くに居てくれた大切な存在だった」

先輩も私を思ってくれてたんだ。
止まったはずの涙がまた溢れて来る。

「待ち合わせの前日まで息があったんだ…
待ち続けることになる鈴木さんをずっと心配してた」

私の心配だなんて先輩はバカだ。
先輩が一番つらかったはずなのに。
いつも周りに気を使って無理に笑顔を見せて…それなのに最後は私にまで気を使って。

「鈴木さんは彗にとって凄く大事だったんだと思う。自分の置かれてる立場が一番きついのに優しいから何からも逃げられなくて。俺に連絡して来て愚痴ってた」

そう言って笑う西野さんの顏はつらそうに見える。
弟を亡くした悲しみは彼も消えてない。

「愚痴以外はずっと鈴木さんの話ばっかり。プラネタリウムもただ誘うだけなのに緊張して、あいつ勇気出して誘ったんだよ。それを俺は知ってたから待ち合わせのあの場所に行ったんだ」

「西野さんと…会ってないですよね?」

来ない先輩を待ち続けて…入館はしないで先輩との思い出の記念にハンドタオルを買ってそのまま帰宅した。

「彗を待つ鈴木さんが幸せそうで言葉を掛けられなかった。これ彗の持ってたプラネタリウムのチケットだよ」

少し日に焼けて茶色くなったチケットは未使用で確かにあの時の物。

震える指で受け取ると涙がどんどん溢れ出す。