「鈴木さん出掛けない?」

時計はもう午前1時を回ってる。

「もう一カ所、彗との思い出の場所があるよね?」

西野さんは知ってるんだと分かった。
敢えて言わなかったあの場所のこと。

私と先輩の初めての出会った最初の。

「でも、今からだと…」

「大丈夫。二人っきりにして上げるのも悪くないと思う」

良哉と光を見てたら西野さんの言葉の意味が分かった。

「近藤くん、出掛けてくるから後はお願いね」

私と西野さんは昼間の熱が引かない外に出て歩き出した。

「その場所って近いの?」

ほろ酔い気味の西野さんと素面の私。
暗い夜道と足下の悪い小高い山をゆっくり登ってく。


ザバーンーーザバーンーー

効果音の感じ方は人それぞれ。
岸壁に打ち付ける白波は打ち付けては引いてを繰り返す。

この場所は色あせず変わらない。

「ここです、ね」

あの夏以来この場所には来てなかった。
来られなかったが正解かな。
もう先輩は居ないと現実を知りたくなかったから。

「さすが彗だな。こんな場所を見つけたなんて」

冬の星空とは違うけどこの場所から見る星空は今も変わらずに綺麗。

「鈴木さん…あっちに行ってようか?」

「だい、じょうぶです。居て下さい」

自分でも気づかないうちに涙が伝ってた。
先輩が居なくなっても涙は出なかったのに。

「鈴木さん…」

「ずっと、願ってました。先輩にもう一度会えたら出逢えたら…殴ってやろうと!でもでも先輩は私のところには来てくれない!それなら何であんな物残して逝ったんですか?!どうして…」

ずっと一人で抱えてきた言葉を全部吐き出す。