「チーズ…北欧」

「鈴木さん、何か言った?」

私、口走っちゃった。
どうしよう…聞こえた?

「鈴木さ、」
「私、婚約破棄したの」

テーブルにぐったりと頭を置いてた光はクイっと顏を上げた。

「お前、今なんて」

「だーかーらー!破棄して別れたの~‼」

「どういうこと⁈」

私の口走った言葉なんてサッと消え去る発言に良哉が一番驚いた顏を浮かべた。
順風満帆で絶対にこんなことないと思ってた。

ー絶対って絶対じゃないんだよ

課長が私に言った言葉を思い出す。
何でも何に対しても絶対なんてないんだ。

去って逝く順番もに“絶対”がないように。

「浮気して妊娠させたんだって。私も悪いのよ…研究に仕事、甘えてたから。反省はしてるけど何も後悔はしてない」

酔い潰れてたのにスッキリとした顏が普段より一段と綺麗に見える。

「良哉そんな顏しないでよ。はははっ」

今にも泣きそうな良哉の顏を指さして光は笑い出す。

「なんだよ」と言いながら光の頭を撫でる光景に感動してしまった。

大好きな光の幸せを陰ながら応援してた男がこれから次第で運命が変わっていく。

本当なら喜んでも良いはずなのに光を思って目元には涙が浮かんでる。