会いたくて逢いたくても彼はいない。~ Where Yesterday Sleeps(昨日が眠る場所)~

「わざわざすみませんでした。いつでも良かったのに」

エレベーターのボタンを押して苦笑いを浮かべる私に西野さんは笑みを浮かべる。

「近くに寄ったからね。それに奈緒子さんからも呼び出しされてたし」

「はい」と私のハンドタオルを返してくれる。

「ありがとうございます」

車に置き忘れてたハンドタオルはお気に入りの物で探してた。

「星、やっぱり好きなんだね。取材内容を見た時は本当に驚いた」

10回は再考されて悔しくてあれは確かに頑張った。

「それ、昔プラネタリウムのお土産売り場で見たことあるんだけど」

「そう…なんですか」

これは昔プラネタリウムで買った物で使いすぎてボロボロになってる。
でもずっと捨てられない。

「たまたま買っただけです」

そうとしか言えず上がっていくエレベーターの階数を見つめた。

「たまたま、ね」

西野さんも呟いてその後の会話を遮るようにエレベーターの階数を告げるアナウンスと共に扉は開く。

「江本はあちらでお話があるみたいです」

二人っきりのエレベーター内は息苦しくて
急いで西野さんをミーテイングルームに案内する。

「コーヒーで一息ついてから入ろうかな」

「奈緒子さんからの無理難題に供えて」と
自販機の前に立った。

「コーヒーはうちで出しますよ」

私も冷えたカフェラテを置いたままの席に戻り違和感を覚えた。