会いたくて逢いたくても彼はいない。~ Where Yesterday Sleeps(昨日が眠る場所)~

「やっぱりここに居た!」

課長が「ホント好きね」と私の隣に座ってパソコンを覗き込む。

うるさい雑音(女子の妬みとか)聞こえないし大きな窓から色がる空。
十分すぎる癒しを仕事をしながら満喫できる素敵なスペース。

「私に何かあるんですか?」

「ん?西野くんが莉桜に会いに来るって連絡あったのよ」

「どうして?」

「私が知るわけないでしょーが」と笑って
フリースペースの横に併設されたミーテイングルームを指さした。

「取り敢えず受付に迎えに行ってくれる?私も話があるから莉桜の用事が終わったら連れて来て」

「私じゃないとダメですか…」

「莉桜指名だったんだから当たり前でしょ」

新たにお願いした取材の件はまだ日程を決めてない。

「西野くんも色々忙しい子だからねぇ」

取材前に見たプロフィールには講演だけじゃなく研究も続けてるって書いてたから
本当に忙しい人なんだと思う。

「いつにするか…」と手帳を開いて私のスケジュールも確認。

「お見合いの日程じゃない?」

「だから、お見合いはしませ、」
「あ、もう着いたって!はい、莉桜走る‼」

「そんな無茶苦茶な…」と言ったところでこの人には通用しない。

「分かりました。あっ、パソコン」

大事な資料はパスワード無いと開けないしそのままで良いか。

「課長、ここ見てて下さいね」

貴重品は他に置いてないけど少し心配。

「任せなさい!」

綺麗な唇が弧を描いたけど
すぐフラフラ居なくなるからあてには出来ない。

「りーおー」
「はいはい、行きます」

重い腰を上げて脱げかけてたミドルヒールのパンプスに踵を沈めて1階ロビーに急いだ。