会いたくて逢いたくても彼はいない。~ Where Yesterday Sleeps(昨日が眠る場所)~

ザバーンーーザバーンーー

効果音の感じ方は人それぞれ。
岸壁に打ち付ける白波は打ち付けては引いてを繰り返す。

この状況は…

サスペンスドラマ?
あぁ、あれね…
犯人が追い詰められて自白するシチュエーションのやつ。

「こんなマネするバカがいるとは…」

目の前には犯人では無く同じ高校生で私達みたいな庶民とは別格の人物。

地元で有名な会社の社長のご子息で生徒会長。
文武両道で顏も他の学校にファンクラブが存在すると噂の人。

「またか…」

ボソっと呟く彼は綺麗な顏を歪めた。

「すみませーん!ここ、立ち入り禁止区域なんで他でお願いしまーす」

私のバイトの一つである海岸警備。
普通なら遊泳禁止区域でのサーファーさん達への注意を任されてるけど稀に自死行為を
未然に防ぐ事もある。

「聞こえないですかー?」

拡声器で優しさなんて微塵もない声で言うと座り込んだ彼はスッと私に目をやった。

まぁ、認めたくないけどイケメン。
入学式で生徒代表挨拶してた顏が月に照らされそのまま吸い込まれて行きそう。

「きみは、誰?」

きみ?私?

こっちが一方的に知ってるだけで彼は私を知るわけがない。
まぁ、名乗るほどでもないですよね。
こういう時は適当大事!

「通りすがりの警備員でーす!早くそこ離れて下さーい(寒いし帰りたいんで←これ言葉にしないやつ)」

2メートル先の彼に近づく事はしない。
追い詰める事になりかねないし下手(へた)に近づいてドボンと落ちられたら夢見悪い。