会いたくて逢いたくても彼はいない。~ Where Yesterday Sleeps(昨日が眠る場所)~

「鈴木さんに興味があるんだけどな。それが理由じゃダメ?」

目の前でお見合い希望されるって変な感じで緊張が解れていく。

「私にも私の理由があって。お話は嬉しいんですけど」

彼にも理由があるのなら私にだって理由がある。

「それなら仕事上の関係ってことで食事に誘うのは有りだよね」

「まぁ、仕事絡みの食事なら」

嫌がらせ並みの再考メールをさせた相手とは思えない押しの強さに諦めて自分のルールを少し曲げる。

「決まり。今日はまず無事に送り届けなきゃね」

そう言う彼、西野さんは高級SUV車のハンドルを握りゆっくりとアクセルを踏み込んだ。



「莉桜ー。おはよ!体調どう?」

kaiko-general trading company“(ジェネラルトレーディングカンパニー)

黒をベースに建設されたスタイリッシュな本社は
海外も含め総社員数40000人強の国内トップクラスの従業員数をほこる総合商社。

近年は宇宙開発事業にも着手しており
アメリカのNASAや日本のJAXAとの関連事業も進めている。

「おはようございます。置きざられたけど大丈夫でした」

目の前のデスクに座るテンション高めの江本課長に挨拶をしてパソコンの電源を入れた。

「低いテンションで私が酷い事したみたいに言わないでよ~」

迎えに来てくれたのに置いて帰ったのは課長で初めて会った西野さんに送って貰ったことが私は納得いかない。

悪い人じゃない。
でも…色々思い出して昨日も眠れなかった。

「西野さんは昔から知り合いなんですか?」

「元バイト先の後輩。莉桜、もしかして惚れちゃった?」

「どうしてそうなるんですか」

そんなわけがない。
逆に私は避けたい。

「近藤くん以外の男性の話聞いたことないから興味持ったのかなって」

旦那さん同様ケラっと笑って「これ舐めて」と塩アメをポイと投げてくる。