会いたくて逢いたくても彼はいない。～ Where Yesterday Sleeps（昨日が眠る場所)～

「お前、顏色悪いけど本当に大丈夫？」

「そんなに？」

一応サイドミラーで確認するけど太陽の光で全然分からない。

「飯、俺がお前の分もほとんど食べたし」

私の額に手を当ててくれるの良哉の優しさが染み渡る。

「取材、上手くいけば良いな」

そう言う良哉の言葉には「お疲れ」の労いも込められてる。

今日の取材相手にインタビューが決まって質問内容をメールしても何かに付けてOKが貰えず何度も頭を抱えた。

「あんなに頑張ったんだからな…結局何回？」

「うーん。数えてなかったけど10回以上かな…」

「そこまで来ると嫌がらせレベルだろ?!」

私だってそう思える程の再考の嵐で今日が
来るまで苦労した。

「また相談させてね。今日が上手く行けば今度は私が奢る」

笑顔で右手をグッと握りしめ良哉の前に出すと答えるようにお互いの右手を軽く合わせた。

「無理はするなよ。いつでも良いから連絡な！飲み会のことは光にも聞いとくから」

「お願いね。決まったら教えて」

良哉は見た目とギャップがあり過ぎる。

一件見た目は強面なのに身体、心全部が広くて大きい。

「ライオンを被った大型犬」

「何か言ったか？」

ついつい出た言葉が聞こえてなかったみたい。

「別に、お互い頑張ろー」

ドアを閉めて良哉に手を振り今日の取材先である有名大学の理工学部を目指し歩き出した。

「天文学者、イヤな人種にイヤな分野のインタビュー…それにあの地獄の再考」

バインダーに挟んだ資料を取り出した。