会いたくて逢いたくても彼はいない。~ Where Yesterday Sleeps(昨日が眠る場所)~

「アジフライ美味しそう」

「おっ、食べるか?」

「じゃあ、和風ハンバーグと交換しよ」

お互いの定食をシェアしてサクサクのアジフライを頬張った。

「めちゃくちゃ美味しい~!」

揚げ方も最高!
身もプリプリでしっかりしててふわふわ衣とベストマッチ。

「その顏をお見合いで見せれば上手く行くんじゃねぇの?」

課長にも似たようなこと言われた。
私の表情ってそんな欠落してます?

「ちなみにどんな顏?」

本日2度目の表情ネタに教えを請いたい。

「その美味そうな顏」

何それ…?
自分では分かんない。

「表情筋不足って言うなら多分母親のお腹に置き忘れた」

「んな、バカな」

昔はまだ表情筋もあった。
あの時から私の何もかもが止まったままな気がする。

「お水ちょうだい」

良哉は私のコップに並々と冷たい水を淹れながら少し真剣な顏を向けてくる。
この顏はだいたい私の話を聞いて心配する時に向けられる。

「多いよ」

水が並々すぎる…。
コップを持つと零れそう。