私の中にあるモノ

私は、半ば放心状態で、自分の額ににゅっ、と生えたツノに触れた。

…私、ツノが生えてる。

さっきの篠森さんにも、目の前の山口教授にも、こんなツノは生えてない。

それはつまり、私が『竜人』であることの証明だった。

「どうして…。…私…」

「ん?」

「竜、って…何なの?あなた達は、どうして竜人なんか造って…」

「うーん…。…またそこから説明するのかぁ。なかなか骨が折れるなぁ…」

そうね。私、記憶喪失5回目なんだった。

つまり山口教授は、これまでも4回に渡って、私に同じ説明を繰り返してきた訳だ。

うんざりするのも無理はない、けれど…。

教授にとっては5回目でも、今の私にとっては初めての経験だから。

面倒でも、ちゃんと教えてもらわなきゃならない。

すると。

「そうだ、こんな時の為に…。前回の記憶喪失の時、良いものを作ってたんだった」

「…良いもの?何?」

「えぇと、確かこの辺に…」

とか言いながら、山口教授は机の引き出しを開き始めた。

「あれ?…ない…。…じゃあこっちか?…いや、違うな…」

「…」

「…あれー…?間違えてシュレッダー…。いやいや、確かここに…」

「…」

「ちょっと、皆宮。そんな顔で見ないでくれる?」

…ううん、別に。

私の記憶に関わる大事な資料(?)を、そんな雑に扱う教授に呆れていた、とか。

私の記憶の手がかりを、万が一紛失されていたら、どう責任を取ってもらおう、とか。

そういうことは考えてないから。

「大丈夫だって、ちょっと…。…あ、あった」

山口教授、しばらく机の引き出しをゴソゴソして。

奥の方から、ホッチキスで留められた何枚かの紙切れを取り出した。

引き出しの奥にしまわれていたせいか、書類の端っこが折れ曲がってしまっている。

この扱いの雑さには、若干の腹立たしさを感じたものの。

一応、ちゃんと読める状態で保管していてくれたから…それについては感謝しよう。

「ほら、これを読んで。君の知りたいことは、大体これに書かれているはずだよ」

「…ありがとう」

私は、その書類を受け取った。

この書類こそが、私の記憶そのものなのだ。