私の中にあるモノ

一人取り残された私は、図書室に残り。

先程開いた本のページを、もう一度開いてみた。

…そこには、ショッキングな実験の写真が掲載されていた。

先程見た、この写真だけじゃない。

更に本のページを捲ると、別の写真も載っていた。

いずれも白黒写真で、カラー写真は1枚もない。

それでも、その凄惨さは、充分に伝わってきた。

…ムメイちゃんが、これらの写真に辿り着く前に挫折してくれて、本当に良かった。

ムメイちゃんはこの本を、「竜人研究所の昔の研究」の本だと言った。

つまりこの写真は、いずれも、この施設で行われた実験の様子を写したもの。

…それだけじゃない。

ムメイちゃんは、もっと気になることを言った。

…6階に、竜が住んでるって。

考えれば考えるほどに、そんなことは有り得なかった。

だって、竜族はもう…とっくの昔に滅びたのだから。

人間が、その手で滅ぼしたのだから。一匹残らず。

今も生きているはずがない。記憶を失う前の私の、ただの冗談だ。

…その、はずなのに。

どうしても、心の中に引っ掛かっていた。

どうして私…そんな下らない作り話を、ムメイちゃんに聞かせたの?

それに…どうして私は、6階のことなんて…。

…と、一人で考えていると。

「…あら?皆宮さん。ここにいたの?」

考え込んでいた私の背中に、篠森さんが声をかけてきた。

「…篠森さん…」

「訓練室にいないと思ってたら…。ここだったのね。勉強しているの?偉いわね」

「…」

別に勉強してた訳じゃないよ。

ただ、考え事をしてただけ。

「…あら?その本…」

篠森さんは、私がテーブルの上に置いていた本…竜人研究所の古い研究書…を、見つけた。

…丁度良い。

彼女に聞いてみるとしよう。

「…どうして、こんなものがあるの?」

私は、篠森さんにそう尋ねた。

「どうして、って…言われても」

「酷い…実験をされてる人の写真が載ってたよ」

篠森さんもこれ、この本…見たことあるんでしょ。

だったら、彼女も知っているはずだ。

かつて、この研究所で行われていた、残酷な実験の数々を。

「あぁ…。…竜人研究所の、初期の実験ね…」

この口調。

やっぱり、篠森さんも知ってるんだ。

「どうして…あんな酷いことをしたの?…篠森さんも関わってたの?あんな実験に…」

「いいえ。その研究報告書が書かれたのは、私が生まれるよりも前のこと…。ずっとずっと前の実験よ」

「…」

…そう。

だから、私はあんな非人道的な実験には加担してません、ってこと?そう言いたいの?

…関係ない。同罪だよ。

一つの命を、自分達の都合の良いように操っている。

その一点だけで、この研究所にいる職員達は、みな同じ罪を背負っている。

「…あの実験は、何なの?」

「…あの実験?」

「身体の半分が人間で、半分が鱗に覆われてる検体の写真が…」

「あぁ…。…あれは初期の竜人実験。簡単に言うと…人間を、竜に『造り変える』実験よ」

人間を…竜に造り変える?