私の中にあるモノ

皆宮…ムリカ…か。

いつから私、そう呼ばれてたんだろう…。

「…困ったわね…」

白衣の女性は、自分の名前を聞いてもピンと来ていないらしい私を見て、眉をひそめた。

「皆宮さん…。あなた、自分のことを覚えていないの?」

「…。…うん」

「そう…。じゃあ、また記憶がなくなったのね…」

…また?

…また、って言った?

「どういうこと…?私、これまでも記憶を失ったことがあるの?」

「そうね…。…ちょっと待って、私じゃなくて、山口教授に指示を仰ぎましょう」

山口教授…?

白衣の女性は、ポケットから携帯端末を取り出し。

それから、何処かに…誰かに連絡を入れた。

「もしもし、教授…。…私です、篠森(しのもり)です」

篠森…さん。

この女性の名前だろうか。

「はい…。実は、皆宮さんが…また記憶がリセットされたみたいで…」

…篠森さんは残念そうに、「また」という言葉を口にした。

非常に落胆しているようだった。

どうして…?私、記憶喪失を繰り返してるの…?

「えぇ…。そうですね、はい…。…最近、シンクロ率が上がってきてたのに…これでまた振り出しです」

「…」

その口調から、篠森さんと、電話の向こうの山口教授、という人にとって。

私の記憶喪失が、都合の悪い出来事であることがうかがわれた。

シンクロ率って…?振り出しってどういうこと…?

「…分かりました。それじゃ、皆宮さんを連れていきます」

そう言って、篠森さんは携帯端末を切った。

ふぅ、と溜め息をつく篠森さん。

…えぇと。

「…あの…。私…どうすれば…」

「…あぁ、ごめんなさい。大丈夫」

「…」

「皆宮さん。一緒に来てくれる?今、山口教授に連絡したから」

どうやら私は、これから山口教授、という人に会わされるらしい。

その人なら、私のことが…私の記憶がなくなった理由が、分かるだろうか?

「さぁ、こっちよ。5階に上がりましょう」

篠森さんに促され。

私は、彼女についていった。