私の中にあるモノ

やっぱり、外の空気は新鮮だ。

「ふぅー…。はぁー…」

思わず、私は胸いっぱいに深呼吸をした。

…ずっと図書室で、根を詰めていたからだろうか。

凄い開放感だ。

もっと早く、中庭に来れば良かった…。

…一人、気分を良くしていた私だったが。

「…皆宮、そろそろ良いか?」

「あ…うん、ごめん。どうぞ」

私は気分転換しに、中庭まで来た訳じゃない。

武藤くんは、真剣な表情で私を見つめていた。

「…実は、皆宮に協力して欲しいことがあるんだ」

「私に…?」

「あぁ。…頼めないか?」

…それは…。

私に出来ることなら、何でも…と、言いたいところだけど。

記憶喪失の私が、無責任に安請け合いするのは駄目だよね。

ちゃんと事情を聞いてからでないと。

「出来ることなら、協力してあげたいけど…。…一体何の話?何を協力すれば良いの?」

「…」

私の問いかけに、武藤くんは一瞬黙り込み。

それから、ごくりと生唾を飲み込み。

声を潜めて、それでも確かな口調で、一言答えた。

「…脱走だ」

「だっ…」

あまりに驚いて、私は大きな声を出してしまいそうになったのを、手で押さえた。

危ないところだった。

…でも、脱走って…。脱走…。

「…どういうこと?」

武藤くんも、隣にいる芦田さんも、真剣そのもので。

とても、冗談を言っているようには見えなかった。

まだ小さな立葉さんは、芦田さんにぎゅっとしがみついて、一言も言葉を発しなかった。

「言葉通りの意味だ…。…俺達は、この研究所から脱走する計画を立ててるんだ」

「…そんな…。…嘘でしょう…?」

「嘘じゃない。俺達は本気だ」

「…」

…武藤くんが本当に、本当に本気なんだってことは。

彼の真剣な眼差しを見れば分かる。

竜人研究所からの…脱走。

考えたこともなかった…。

だけど…でも…。

「…どうして…?」

そう聞かずにはいられなかった。

「どうして逃げるの…?」

…確かに、ここは幸せな場所ではないかもしれない。

毎日、辛い「訓練」ばかりで嫌になる…その気持ちも分からなくはない。

記憶喪失の私でも、この場所が楽園でないことは分かる。

でも、だからって逃げることを考えるなんて。

思ってもみなかった。

「確かに…訓練は辛いけど、だからって研究所を出ても…他に行くところなんて…」

私達の存在は、研究所以外の人々には認知されていない。

この研究所を出たら、私達は竜人ではない。

人間達にとって、私達竜人は…ただの、バケモノ以外の何物でもないのだ。