私の中にあるモノ

―――――プツッ、と。電源が落ちたかのようだった。

 


「…」

長く、深い眠りから目を覚ました。

気がつくと、私は何処かのベッドに寝かされていた。

深く、暗い闇の中から…ようやく、光のもとにやって来た。

…いや、ここは…光、なのだろうか?

…分からない。何も…。…思い出せない。

「…」

私はゆっくりと起き上がって、自分の今いる場所を見渡した。

白い、小さな箱みたいな部屋だ。

この部屋に窓はなかった。

家具も最低限で、今、私が横たわっている備え付けのベッドと、小さな丸テーブル、それから折りたたみの椅子。

それと、安っぽい作りの簡易クローゼットが一つ。

置いてある家具は、精々そのくらい。

時計もカレンダーもなく、日時を推測させるものは何もなかった。

それどころか、私が何者なのか、手がかりとなるものは何もない。

…ここは、私の部屋なのだろうか?

ベッドの下に、今しがた脱いだばかりのように、黒いジャケットと黒いスカートが投げ捨てられていた。

…これも、私の服?

懸命に記憶を呼び起こしてみても、やはり覚えがない。

「…ここは…」

…何処なんだろう?

私は誰?…一体何者?何でここにいるの?

私は…一体、何なの?

「…」

…やっぱり、思い出せない。

だけど自然と、恐怖は感じなかった。

恐怖という感情そのものも、忘れてしまったのかもしれない。

私は、ベッドから立ち上がった。

床に落ちていた黒いジャケットを拾って、羽織った。

足は素足だったけど、ベッドの横に、これまた黒いサンダルが置いてあるのを見つけて。

私は素足のままそれを履いて、立ち上がった。

それから、部屋の入り口…この部屋の唯一、別の場所と繋がっている場所…に向かった。

どうやら、立ち方、歩き方は覚えているらしい。

それさえ忘れていたら、私はベッドの上から起き上がることさえ出来なかっただろう。

私は、部屋の扉の取っ手に手をかけた。

扉に鍵はかかっていなかった。

扉を押し開け、私は部屋の外に繰り出した。