私の中にあるモノ

「あぁ…。自分が図書室に来た時は、大抵いつも、みなっちゃんもいて…」

「…」

「テーブルの上に、何冊も本を並べて…誰よりも真剣な顔で読んでたぞ」

「…そうなんだ…」

記憶をなくす前の私は、随分な読書家だったらしい。

そんなことさえ忘れてるんだね、私…。

そっか…。だから余計に、私にとって図書室が気晴らしになるんじゃないかって。

「…ありがとうね、此代…」

「いや…自分は、別に…」

「折角だから、少し読んでいこうかな…。…此代も一緒にどう?」

「…そうだな。自分は読書、あんまり得意じゃないけど…。みなっちゃんがそう言うなら」

と言って。

私と此代は、並んで、一緒に図書室に入った。

「どれを読んだら良いかな…」

「どれも似たようなものだと思うが…。…これ、とか?」

此代は、分厚い図鑑のような、一冊の古い本を手に取った。

この本が、此代のおすすめ?

「…どうだ?」

「え?」

「自分の記憶が正しければ、みなっちゃんはよく、この本を読んでたんだが…」

「…私が…この本を?」

「お気に入りだったのかね?…なんか思い出すこと、ある?」

「…?…どうかな…」

この本が、私のお気に入り…。

私はおもむろに、そのページを開いてみた。

そこには。

黄ばんだ本のページの見開きいっぱいに。

黒いインクで、不思議な生き物のスケッチが描かれていた。

…これ。