私の中にあるモノ

私が興味を示すと、此代は、研究所の1階にある図書室に連れて行ってくれた。

「着いたぞ。ここが図書室だ」

「…へぇ…」

図書室なんて、あったんだね。

研究所1階の、訓練室の隣に。

広い部屋があって、そこが図書室として使われていた。

背の高い本棚がいくつも並び、そこに様々な書籍が収められていた。

図書室の中央には、長テーブルと丸椅子がいくつも置いてあって。

そこに腰掛けた竜人の成功検体達が、熱心に本を読み耽っていた。

…結構いるんだね。

「みんな、凄く熱心に読んでる…」

「そうだな」

「…そんなに面白い本なの?」

「まさか。そういうのじゃないよ」

此代は、噴き出すように笑った。

「『面白い本』なんて、この施設には一冊もないんじゃないか?」

「え、でも…」

「まぁ、どんな本を面白いと感じるかは、人それぞれ、竜それぞれだから…。みなっちゃんにとってはどうか分からないが」

…此代にとっては、面白くないの?

「あの人達、凄く真剣に読んでるから…」

「そりゃそうだ。本を読むのも、訓練の一環だからな」

えっ…。

「ここに置いてある本は、どれも…昔の、竜という種族に関する研究の本ばかりなんだ」

「…」

「だから、これらの本を読むことも、シンクロ率を上げる為に必要な訓練ってワケ。…ご理解?」

「…。…ご理解」

「そりゃ良かった」

…そっか。

図書室が訓練室の横にあるのも、それが理由か。

ここでこうして、竜に関する書籍を読むことも。

シンクロ率を上げる為の、訓練の一環…。

…。

…気晴らしの為に来たのに、何だか全然気晴らしにならないね。

「…なんか、ごめんな。気分転換させてあげようと思って、連れてきたのに…」

私が複雑な表情をしていることに気づいたのか。

此代が、申し訳なさそうに私に謝った。

え?いや…。

「余計、難しい顔をさせてしまってるな…」

「そんな…。此代は悪くないよ」

分かってるよ。私が難しいことばっかり考えてるから、何とかして気を逸らそうとしてくれたんだよね。

「自分にとっては、ある意味での気分転換なんだよ。…少なくとも、さっきまでの『訓練』よりは…痛い思いはしないからな」

「…そうだよね」

あんな痛い思いをするくらいなら。

本を読む「訓練」の方が、ずっと楽だ。

この部屋にいる竜人の成功検体達が、これほど熱心に読書をしているのも、理解出来る。

すると。

此代は、気になることを口にした。

「それにみなっちゃんは…。前はよく、図書室に入り浸ってたから」

「…!…本当?」

それって…記憶をなくす前の私が、ってことだよね?