私の中にあるモノ

つまらないと言う割には、意外と美味しそうに食べてるように見えるけど。

それに…。

「…それ、本当だと思う?」

「は?」

「食事を『栄養摂取の為の義務』と捉えるなら、確かに面倒なだけの仕事かもしれないね。…だけど、食事を『食べる楽しみ』とみなせば」

「…」

「そうすれば、食事の楽しみを味わうことが出来ない竜人よりも、人間の方が優れた種族と言えるかもしれない…。…その可能性はない?」

「…成程」

山口は腕を組んで、ぱちんと指を鳴らした。

「そういう考え方もあるか…。…なかなか興味深い意見だ」

「そう」

「やはり、竜人研究は面白い。竜は、人間とは考え方が違う」

満足そうに頷いてから。

「…おっと、麺が伸びる」

慌てて、再びカップラーメンに取りかった。

…ずっと、このカップラーメンの異臭漂う部屋の中にいて。

段々と、慣れてきた…と言うか、鼻が馬鹿になってきた。

換気したい…。

…それよりも。

「…山口、私…昨日の結果を聞きに来たんだけど」

「んー?何?」

何、じゃなくて。

「シンクロ率の測定だよ…。昨日したでしょ」

「あぁ」

「そろそろ結果が出たんじゃないかと思って…」

「そういえばそうだった。うん、出た出た。出たよ」

山口は片手で、割り箸を使ってカップラーメンを啜りながら。

もう片方の手で、器用に机の引き出しを開け。

そこから、測定結果を記した紙切れを取り出した。

「どうだった?私…」

「720」

「…」

山口は、簡潔にその数字を答えた。

720…。

「…それって高いの?低いの?」

「竜人全体の中で、って意味では、この数値は普通。ごく普通。超平均的」

そう。

「だけど、過去の君と比べると低い。特に、記憶を失う前の直近のシンクロ率と比べると…」

「…下がってるのね」

「残念だよ。また振り出しに戻ったね」

そっか…。…それは…。

…残念、なことなのだろうか?

少なくとも、研究者である山口にとっては残念なことなのだろう。

でも、私にとっては別に…。

「挙げ句、『優秀な比較対象』も、そろそろダメになりそうだしなぁ…」

と、山口は落胆したように呟いた。

「え…?」

どういうこと?

「…ま、いいや。こればっかりは、どうしようもないし」

「…」

「それに、ここが最低のラインで、これから訓練すれば、また上昇するだろうし…。今後に期待するよ」

…あ、そう。

「今度はシンクロ率の上昇と…。それから、記憶を無くさない方法についても考えないとなぁ…」

「…それは、考えて何とかなるものなの?」

「やれるだけのことはやってみる、って話だよ」

「…」

「ま、そんな訳だから。今日から君も、訓練再開ね」

山口は、割り箸をぴっ、とこちらに向けてそう言った。

…言われなくても。

訓練っていうのが、何なのか…知らないけど。