私の中にあるモノ

記憶喪失の私、皆宮ムリカが。

この竜人研究所で迎える、二日目の朝。




「…」

私は、ぼんやりと夢を見ていた。

白いモヤモヤとした塊が、そこにいた。

とても大きくて、神々しくて…でも、姿は見えない「それ」。

私の記憶の中に…確かに存在している「モノ」。

「…あなたは…。…誰なの?」

私は声を出して、その白いモヤに話しかけた。

「一体どうして、そこにいるの…?私に何か伝えたいの」

「…」

「それ」は、何も答えなかった。

無意識のうちに、私は「それ」を生き物として認識していた。

「それ」はただの概念。形を持たないモノ。

…それなのに、「それ」は確かに、生きていた。

身体がなくても、心臓が動いていなくても…確かに生きている命が、そこにある。

だから、私は語りかけた。

「いつからそこにいるの?…あなたは…」

「…」

「あなたは…私に何を伝えたくて…私の中にいるの?」

私の失われた記憶を、あなたは知っているの。

それとも…その記憶こそ、あなたが…。

「…」

「それ」は、やはり何も答えなかった。

だけど、私にははっきりと分かった。

「それ」が私達に、何を伝えようとしているのか。

深い闇の底から、儚い光の向こうから。

遠く、遥か昔に失われた種族である「それ」は。

今、私達の…人間の世界に、人間の中に生まれ直して。

…そうだ。最早、「それ」ではない。

「彼ら」はただ、私達にその想いを伝えようと…。

だから私は、「彼ら」の本当の気持ちを…本当の想いを感じたい。

「彼ら」に向かって、手を伸ばそうとした…。


…けれど。






…夢は、そこで途切れた。