私の中にあるモノ

生まれる前から、私は死にかけていた。




私は、小さな透明のカプセルの中に入れられていた。

カプセルには、青い液体が満たされ。

その中央に、親指の先程の大きさの、小さな肉の塊が浮かんでいた。

私の周囲には、同じようなカプセルが9つ、並んでいる。

私のカプセルと合わせて、全部で10。

そのうちの8つは、肉の塊がしぼみ、砕け、粉々になっていた。

「…どう?今回は。誰か一人でも生きそう?」

「いえ…。…既に8人が崩壊、残り2人は…」

「駄目です。もう一人崩壊しました」

「残る一人も…。…シンクロ率、安定しません」

「あー、うん。やっぱり無理かー」

カプセルの前で、白衣を着た数名の人間が、こちらを見つめていた。

中央にいた男が、私の目の前…カプセルのガラスの向こうに立った。

「…仕方ない。今回も無理だったってことで。維持装置の中断を…」

「…。…あ、待ってください。山口(やまぐち)教授」

「うん?」

「…残る一人のシンクロ率、安定しました。…この個体は、生存可能です」

「…へぇぇー」

山口と呼ばれた男は、再び、カプセルの中の私を見つめた。

「運が良いねー、君。もう無理かと思ったよ」

山口はカプセルの向こうで、笑みを浮かべていた。

私は、この時のことを覚えていない。

だけど後になって、聞いた話によると。

この時、山口が「無理か」と発言したことが、私の名前…「ムリカ」の由来になったらしい。